第112話 九州電力の15%節電要請について
報道によりますと、九州電力が7月から最大15%の節電を企業や家庭に求める方針を記者会見で明らかにしたとのことです。
その理由として、定期点検中の玄海原発2、3号機及び川内原発1号機の運転再開の見通しがたたないことと火力発電に使う燃料調達が難航していることが挙げられています。
このことは東京・東北電力の電力不足の原因とは明らかに異なります。東京・東北電力の場合には、発電能力の不足に由来しているのですが、九電の場合には燃料不足に
由来していると読取れます。つまりは、火力等の発電能力はあるが燃料(エネルギー)が無い。そして原子力発電所は発電出来る状態にあるが、
諸々の要因で運転再開が出来ない状況にあるということです。
ですからその対策は若干異なるものとなります。「計画停電解消に向けての提言」で述べた「ピークカット」や「ピークシフト」ではなく
使用量(電力量)そのものを削減する本来の意味での節電(省エネ)が求められます。
しかし、若干疑問に思うこともあります。それはなぜ7月からなのでしょうか。燃料の消費量を減らすことが目的ならば、即座に実行しなければならないのではないでしょうか。
いきなり今日から15%は無理でしょうが、今から始めてくださいというのが基本的なスタンスであるべきと考えます。
もっと重大なことは、燃料が無くなれば火力以外の発電による電力供給にまで落ち込んでしまいます。大停電どころの騒ぎではないはずです。
7月からなどと悠長に構えていて良いものでしょうか?
何となく納得のいかない報道でした。
さはさりながら、省エネは重要なことです。これを契機といっては語弊があるでしょうが、省エネに取組む良い機会だと思います。色々な工夫をして15%節電にチャレンジ
してみませんか。
余談ですが本日(5/19)の朝日新聞朝刊(九州版?)にNGO活動家 田中優氏の記事が掲載されておりました。
−以下引用−
「〜「家庭は十分に省エネを実行している」。では、節電すべきなのは誰か。「電気料金の単価は、家庭は使うほど高くなるのに、事業系は使うほど安くなる設定。
事業者が、もっと省エネに取組まざるを得ないような料金体系に改めるべきだ。
九州電力のホームページの「電気料金シミュレーション」でも、家庭用は使用量を5倍に増やすと料金もほぼ5倍になるが、事業系はほとんど変わらない。〜」
−以上−
といった記述がありました。確かに高圧受電と家庭用の電力量単価は異なりますが、どこをどのようにしたらこのような結論になるのか、一度ご教授願いたいものです。
また、家庭での省エネは十分と仰いますが、本当に自信を持って十分だと言い切れる方が如何ほどいらっしゃるでしょうか。
ご自分の主張に都合の良い部分だけを取り上げるだけならまだしも、事実と異なることを事実と印象付けるような発言をされることは如何なものかと思います。
<2011/05/21 追記>
九電のこの夏の最大需要電力に対する供給余力は、3%程度と見込まれております。供給余力は8〜10%程度が必要といわれておりますので、5〜7%程不足することになります。
従いまして、ピーク時にも5〜7%程度の抑制が必要ということです。しかしながら、15%という数値は燃料不足に由来するもののようですので、ピークカット・ピークシフト
と使用量の削減を組合わせた総合的な節電対策が必要ということになります。
<2011/07/05 追記>
九電のホームページにおいて「でんき予報(電力の使用状況)」が公表されております。
<2011/12/01 追記>
この冬の節電要請は、5%となっております。これは電力の供給力不足が原因ですので、罰則等の適用が無いというだけで、この夏における東電・東北電力の節電要請と同様となります。
夏場と異なりピークの発生時間帯が異なりますが、具体的な対応策は全く同じです。
以前、九電さんは「節電」という言葉を使わず「省電」を意識的に使っておられましたが、現時点でホームページを拝見すると「節電(省電)」あるいは「節電」を単独で
お使いになっているようです。これらのことは物事の本質とは関係ないことですが、何らかの意図をもって意識的にお使いになっていた言葉ですから、最後までお使い
いただければと思います。
<2012/01/17 追記>
その後も田中氏は、電気料金などについて色々と活発に主張されているようです。
「朝日新聞に掲載された、田中優氏の主張について」
<2012/05/15 追記>
今年の夏の節電要請は10〜12%とのことです。昨年は15%でしたので、原発が全て停止しているのにも関わらず昨年並みの節電要請となっております。
九州電力の場合、約40%が原発に依存しておりましたので、関西電力に比べてかなり健闘しているものと評価できるのではないかと考えます。
しかし、不測の事態が発生しないとも限りませんので、油断せず準備をしておくことが大切でしょう。
<2012/07/23 追記>
既に、節電要請期間に入っております。いよいよ梅雨も明け、いよいよ夏本番です。この夏は、一昨年比10%以上の節電要請がされております。
計画停電に関するスケジュールも送付されてきております。計画停電は最後の手段です。社会的にも経済的にも影響が甚大になります。これを防止するためには、
既に述べておりますようにピークカットが重要となります。
高圧受電している需要家は、これも既に述べておりますデマンド管理を行うことでピークカットができます。しかし、家庭でのピークカットについては、
個々人の意識に頼るしかないといったことで、これといって確実な方法がありません。
数少ない家庭でのピークカットの方法として、アンペアダウンという方法があります。
しかし、余りにも大きくダウンするとブレーカーが頻繁に落ちてしまうという欠点があります。ブレーカーが落ちると思わぬトラブルが発生しないとも限りません。
そこで開発されたのが、家庭用電流報知器です。ブレーカーが落ちるような電流が流れると警報音で報せてくれます。
詳細は「第124話 アンペアダウンの助っ人(家庭用電流報知器)」をご参照ください。
私は、九電から電力逼迫警報がメールされたら、アンペアスイッチを20Aに切替えて節電に協力させていただきます。
<参 考>
第13話 電球型蛍光灯による省エネルギー
第21話 デマンド管理による省エネルギー
第22話 インバーターによる省エネルギー
第23話 エアコンの省エネルギー
第25話 自動販売機の省エネルギー
第30話 温度管理によるエアコンの省エネルギー
第43話 設備改修による省エネルギー
第49話 LED照明による省エネルギー
第55話 家庭でできる電力測定と省エネ活動
2011/05/19新規
2012/07/23更新
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