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第22話 インバーターによる省エネルギー

 エアコン、冷蔵庫、洗濯機、蛍光灯などの家電製品のコマーシャルでインバーターという言葉を良く耳にすると思います。 家電製品にインバーターが採用されている大きな理由として、きめ細かな制御ができることと省エネになることがあげられると思います。 (蛍光灯の場合には、調光するためにということもありますが、商用周波数を高周波化することにより銅鉄型の安定器を小型化して省電力化することに重きがあります。)

 きめ細かな制御の例として、エアコンの場合を考えてみましょう。
昔のエアコンは、設定温度に対して室温が高い時(簡単のため冷房の場合のみを考えます。)には、冷気出して部屋を冷やします。 しばらくして室温が設定温度より低くなると冷気を出すのを止めて送風運転(室内の空気を循環させている)となります。 そうすると自然に室温が上がり設定温度より高くなりますので、再び冷気を出して部屋を冷やします。 このような動作が繰り返されて設定温度近くに室温を維持するようになっております。

 この冷気を作る部分の心臓部が圧縮機(コンプレッサー)というもので、これが動作していれば冷気が作られ、停止していれば送風運転になります。
エアコンには室温センサーが備えられており、これが検知した室温と設定温度を比較して圧縮機を制御しております。
圧縮機の動力源として一般的には誘導電動機というものが使用されております。誘導電動機は、構造が簡単で長持ちでしかも安価なのがその理由です。
ただ回転数が一定(電動機の極数と電源の周波数によって決まる)といった性質があります。 従って、上記のような制御をした場合、電動機が一定回転で廻っているか停止しているかのどちらかしかありません。
少し蒸し暑く感じたらいつの間にか冷えてきたとか、少し冷え過ぎかなと思ったらいつの間にか丁度良くなっていたということを経験されたことがあると思います。

 この問題を解決するためには運転か停止かの中間の状態を作ることが大切です。例えば、圧縮機の運転強度を強・中・弱・停止の4段階にできれば、 かなりきめ細かな制御が可能になります。
例えば、エアコンをつけた直後は設定温度と室温の開きが大きいので「強」運転します。しばらくして、設定温度に近づくにつれ、「中」、「弱」としていけば、 かなりスムーズに室温を維持できるようになります。
圧縮機の強度を変えるためには誘導電動機の回転数を変える必要があり、そのためにインバーターを使用します。

 家電製品の話はこれくらいにして、今回の本題である汎用インバーターの話に移りたいと思います。
そもそも汎用インバーターは、誘導電動機の回転を可変速にすることが最大の目的といっても過言ではありません。
 可変速の用途は、それこそ限りなく存在すると思われますが、テーマの通り「省エネルギー」に絞って話を進めたいと思います。

 ポンプ、ファンなどの流量は、回転数に比例し軸動力は回転数の3乗に比例します。つまり流量が2倍(1/2倍)になれば、8倍(1/8倍)の軸動力となるということです。
誘導電動機を使用した設備は、回転数が一定ですから流量も一定となってしまいます。従って、所用の流量を得るためにバルブやダンパーによって制御しております。
 バルブやダンパーは損失となってしまいますので、省エネルギーの観点からすると発生させる段階で所要流量に制御できることが望ましい訳です。

 設備設計時には通常安全率を見越して所用流量よりかなり大きめな値が設計値とされています。また、電動機は特注でもしない限り0.75kW,1.5kW,2.2kW,・・・という飛び飛びの出力の製品しかありませんので、 まさに設計値にピッタリの場合(たまたまピッタリでも安全のためワンランク上のものが選定されているかも知れません)を除いてここにも余裕があります。 あれやこれやで20〜30%程度(あるいはそれ以上)は余裕があることが多いと考えられます。

 ということは、これらの設備にインバーターを取り付け、誘導電動機の回転数を落としてバルブやダンパーを全開にすれば、黙っていても27〜49%の省エネルギー(定格流量時の10〜20%減)になってしまいます。 (これらの数値はあくまでも理論値です。インバーターの損失などは考慮に入れておりません。)

 さらに欲張って自動制御してやれば、もっと省エネすることもできます。しかし、インバーターを設置して回転数だけ設定することは比較的簡単にしかも安価に実現できますが、 自動制御するとなるとそれ相応のシステムが必要となり、運用管理や保守的にも難しくなり、当然それなりに余分な費用も発生します。

 そこで過大設計部分が20%あったとしますと、ここの部分だけで約半分の省エネになっているのですから、これ以上に省エネするとしても限られた範囲でしかありません。 更なる省エネとそれに対する費用との兼ね合い(費用対効果)で検討を進めることとなるでしょう。

 何れにしてもインバーターによる省エネは、もっともっと推進していくべき分野であろうと考えます。
但し、インバーターはノイズの発生源になりますので、くれぐれもノイズ対策を怠らないようにしていただきたいと思います。

<参 考>
第13話 電球型蛍光灯による省エネルギー
第21話 デマンド管理による省エネルギー
第23話 エアコンの省エネルギー
第25話 自動販売機の省エネルギー
第30話 温度管理によるエアコンの省エネルギー
第43話 設備改修による省エネルギー
第49話 LED照明による省エネルギー
第119話 三相誘導電動機の省エネ装置

2008/06/25新規

2011/09/29更新


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