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第8話 電力と電力量

 電力の単位は、ワット(W)を用います。100Wの電球とかといったやつです。
これは仕事率(単位時間あたりにする仕事)のことで、仕事率が大きいほど能率よく仕事をすることになります。
電球の例で言えば、100Wの電球が60Wの電球より明るいといった具合です。
エアコンでも冷房能力が、2.5kWであるとか言います。以前は冷房能力など熱に関する能力にはkcal/hを使用していましたので、 こちらの方になじみのある方も多いのではないかと思います。また、エンジンの馬力といった表現も現在はkW表示に改められております。
 何れも単位こそ違え仕事率を意味します。つまり、英語のパワー(Power)に該当します。

 電力量の単位は、ワット秒(Ws)を用います。一般的には、キロワット時(kWh)の方がなじみ深いかと思います。
これは電流がなした仕事のことです。仕事ですから本来の単位はジュール(J)ですが、 電力量の場合にはWs(1Ws=1J)やkWh(1kWh=3.6×106J)の方がよく用いられます。
 これは、いわゆる電気エネルギーのことです。

 電力量の単位をWsやkWhで表記しているので、これらを混同していることがたまに見られます。この混同がマスコミ報道でも見かけることがあります。
例えば、太陽光発電の記事で「発電能力3kWのパネルを設置することで年間4300kWの発電が見込まれる。」とかいったものです。当然その逆もあったりします。
「仕事率と仕事」や「電力と電力量」の違いは、高校物理の範囲だと思います。日本の良識を担うマスコミが、この程度かと思うと少しガッカリしてしまいます。

 細かい話はさておき、「省エネルギー」とは何なのかといった話にもって行きたいと思います。
読んで字の如く「エネルギー」を省くことですから、先の「電力量」を省くことになろうかと思います。
 そこで電力量を減らすにはどうすればよいのかということですが、その前に電力と電力量の関係を再度検討してみたいと思います。

 電流が流れている1秒間に電流のなす仕事率(電力)をP,電流のなした仕事(電力量)をQとし,電流の流れている時間をtとすると、

 Q=Pt

となります。
 100W電球の例で考えると、この電球を一時間点灯させたときの電力量Qは、

 Q=100(W)×1(時間)=100(W)×3600(秒)=360,000(J)=360,000(Ws)=360kWs=0.1kWh

と色々な単位で表すことができます。

 さてここで、省エネルギーするということは、Qの数値を小さくすることに他なりません。
このためには、片側を一定だとすると電力を小さくするか点灯時間を短くする必要があります。(勿論、両者共に小さくすれば、より減らすことができます。)
 電力を小さくするということは、例えば100Wの電球を60Wの電球に交換する等の電気機器の能力変更が該当します。 その代わり、機器の能力が減少(電球の場合明るさが減少)します。
 点灯時間を短くするということは、こまめに消すとか外光を採り入れて間引き点灯するとかの運用改善などが該当します。

 このように省エネするためには、電力と時間が密接に関係していることがお分かりいただけたと思います。
先の例は、電力が一定(時間や条件により電力が変化しない)といった最も簡単な例でしたので、もう少し複雑な例を考えてみましょう。

 簡単のため身近な例で話を進めることにします。

 排気量1000ccと2000ccの自動車を考えます。それぞれの自動車に搭載されているエンジンの最大出力は、一般的には2000ccのエンジンの方が大きいといえるでしょう。 簡単のため1000ccが50kW,2000ccが100kWとします。
 さて、電球の例では点灯時間が同じならば電力が半分になれば、電力量も半分になるということがいえました。しかし、自動車の場合にも同様(この場合電力量に相当するのが燃料の消費量)のことが言えるでしょうか?
直感的に「否」という答えが返ってきそうです。
 それは、その他の条件が異なるからです。例えば、エンジン出力当たりの車体重量、メーカーや車種による燃費の違い、運転条件などなど様々な違いが挙げられることでしょう。
下手をすれば、1000ccの車が2000ccの車より燃費が悪くなってしまうことさえありえます。
 ただ一つ確実にいえることは、全く乗らないつまり運転時間をゼロにすれば、双方とも燃料消費量はゼロとなります。これでは、身も蓋もありませんが・・・。

 エコドライブの条件は色々と挙げられると思いますが、ここで言いたかったのは電球と比べると省エネの方法が単純ではないということです。
低燃費の車に乗り換えれば確かに燃費(km/l)は向上しますので、同じ走行距離(同一運転条件で)ならば、燃料消費も減少します。 しかし、燃費の向上分以上に長距離運転するようになれば、結果的に燃料消費が増大することになります。

 電気のことに話を戻しますと、これと似たようなものにエアコンがあります。エアコンの能力は消費電力当たりの冷暖房能力でその性能が決まります。 自動車の場合のエンジン性能にあたります。
 燃料に当るのが電力量です。室温を一定に保つために必要な熱量を供給するために必要な電力量です。
運転条件に該当するものが、外気温度や設定温度であったりします。
 冷房能力が高ければ、急速に冷やすことが可能となります。自動車では、加速能力とでもいえるのでしょうか。しかし、目的のスピードに達するとアクセルで エンジン出力を調整してスピードを一定に保つようにします。同様なことがエアコンでも行われています。この場合には、リモコンの設定温度が該当します。 目的の室温に近づくと冷気を供給する能力を小さくしたり休止させたりして調整しておりますので、常に最大能力で動作しているわけではありません。
ですからエアコンの場合にも冷暖房能力が小さいものが必ずしも省エネであるとは言えません。自動車の場合と同様に様々な条件が加わるからです。

 省エネセンターなどで、「エアコンの設定温度は、冷房28℃、暖房20℃にしましょう!」といっているのは、運転条件の内で設定温度が省エネにとって重要な要素で あるからに他なりません。
 また、燃費の向上に該当する、期間を通して設定温度を維持するために必要な電力量、つまり供給熱量/電力量比(必ずしも最大能力ではない)を向上させる必要もあります。
これは、当然メーカーの技術力の向上によって達成されるべきものですが、これにも限度があります。

 我々、消費者は選択できる範囲で省エネ性能の高い機器を使用し、省エネになるように運転する必要があるということになります。

省エネ性能の高い機器への買い換えについては、種々議論のあるところだと思いますので、改めて書きたいと思います。


<2011/04/13 追記>
 今回の大震災の影響による計画停電などの対策が種々議論されております。その中にもやはり電力と電力量を混同しているケースが散見されます。
先述の通り、電力量(kWh)は電力(kW)に時間をかけたものですからかなり大きな数値になります。一方、東電が発表している数千万kWといった数値は、 ピーク時の発電能力です。この数値と比較しているので、とんでもない結論を導き出している議論も見受けられます。

 計画停電を回避する私なりのアイデアを「第108話 計画停電解消に向けての提言」に掲載しておりますので、ご参照いただければと存じます。

<参 考>
 第11話 省エネ製品への買い替え
 第20話 節電器について
 第21話 デマンド管理による省エネルギー <2014/08/25 追記>
 第23話 エアコンの省エネルギー
 第31話 効率化と浪費
 第43話 設備改修による省エネルギー
 第55話 家庭でできる電力測定と省エネ活動

2008/05/05新規

2014/08/25更新


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