第5話 コストダウンと省エネルギー
省エネルギーシステム(以下、省エネシステム)には、エネルギー使用量の低減を図るものとエネルギーコストの低減を図るものとに大別できます。
勿論、両者を組み合わせたものもあります。
前者の場合には、エネルギー使用量そのものを低減させることにより、結果的にコストが低減します。
しかし、後者の場合には、例えエネルギー使用量が同一(あるいは増加)であってもエネルギーコストを低減させます。
本来の意味での省エネシステムは、前者のみを指すものと解されると考えます。ここでは、これを狭義の省エネシステムと呼ぶことにしましょう。
一般には、後者を含めて省エネシステムと呼んでいるようです。これを広義の省エネシステムと呼ぶことにしましょう。
地球温暖化や資源枯渇問題において必要なのは言うまでもなく狭義の省エネシステムです。
エネルギー使用量そのものを低減させる省エネシステムでなければ、原油や天然ガスなどの資源エネルギーの使用量や二酸化炭素の排出量を減らすことはできません。
しかし、狭義の省エネシステムは、一般的に費用対効果があまり良くありません。例えば、太陽光発電システムを考えれば容易に理解できると思います。
導入費用が以前と比べると安くなったとは言え、償却期間が十数年といったところでしょうか。風力発電にしても然りです。
これでは、如何に良いシステムであっても導入の促進はできません。そこで、政策としての補助金や優遇税制などの手段が必要とされております。
省エネ業者は、補助金等をあてにしていては、商売になりませんから第4話 省エネ提案書の不思議で述べたように
償却期間を3年未満にもっていく努力をしているのです。
その手段として、狭義の省エネと広義の省エネを組み合わせることにより、見かけ上償却期間を短くする方法があります。
最悪の業者では、狭義の省エネもできない上に広義の省エネにもならないようなシステムを売りつけ、訴訟沙汰になったケースもあります。
あまりにも漠然とした説明になってしまいましたので、少し具体例で説明したいと思います。
電気料金を例としてみていきましょう。
電気料金=基本料金+使用量料金
となっていることはご存知だと思います。
もうすこし細かくみてみると
基本料金=契約電力(kW)×基本料金単価×(1-力率割引)
使用量料金=使用量(kWh)×使用量料金単価
といった式で計算されます。(消費税や燃料費調整単価は簡単のため省略しております。また、契約種別によって単価や細かい計算方法が異なります。)
狭義の省エネは、使用量そのものを減らすことによって、使用量料金を減らします。
一方、広義の省エネは、契約電力の低減であったり、電力各社が提供している選択約款におけるメニューから電力使用状況から最適のものを選択することによって、
使用量を減らさずとも電気料金を削減することを目的とします。
極端な話が、契約種別を変更するだけ(電力会社の窓口にて種別変更手続きをする)で電気料金を安くすることが可能です。
このように省エネとコストダウンは密接に結びついております。
私見ですが、省エネシステムの導入促進のためには、補助金や税制優遇などの政策的配慮も必要ですが、
狭義の省エネ促進のためには、広義の省エネを含めて導入の費用対効果を良好にするなどの種々の手法を駆使して、良質な省エネシステムの提案ができる業者が成長・発展
し、悪質な業者が市場から排除されるような制度的枠組みが必要ではないかと考えます。
省エネルギーコンサルタントがコンサルタント料(現状の使用量などのデータを分析して、変更後の予測を行うことはノウハウには違いはないのですが)と称して、
かなりの高額の報酬を得ていることはかなりの問題かと思います。
狭義の省エネに寄与したり、その他何らかの社会的貢献(コストダウンによって得られた利益から優先的に省エネ投資を行うとか、新たな雇用を創出するするとか・・・。)
をするなどの大義名分があればまたしもですが、それらに何らの寄与することなく単なるコストダウンによって自社の利益を図るのみであれば・・・。
要は、如何にしたら省エネを推進することができるかが優先課題なのです。そのために一番良い方法を考えていくことが重要なことではないかと思います。
<2014/08/25 追記>
電力と電力量を混同しているのをよく見かけます。
「電力と電力量」で説明しておりますので、ご参照ください。
<参 考>
第9話 悪徳省エネ業者
第39話 省エネ商法について
第47話 省エネルギー効果検証について
2008/04/29新規
2014/08/25更新
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