第47話 省エネルギー効果検証について
今回のテーマは、省エネルギーシステムの導入効果をどのようにして確かめることができるかといったことです。
このことは導入する側からすれば大変に重要なことですし、省エネ業者にとっても重要なはずです。
しかし、省エネ業者はこの効果検証について今ひとつ積極的ではないように思われます。
省エネ業者が胡散臭い目で見られている理由の一つが省エネ効果検証をいい加減にしているからではないでしょうか。
省エネ効果検証を誠実に行わない限り、省エネ業者は市民権を得られないものと考えた方が良いのではないかと思います。
そこで省エネルギーの効果検証について、少し突っ込んでみたいと思います。
省エネルギーの効果検証というものは、簡単そうにみえて実は意外に難しいものなのです。
効果検証の難しさは導入前後(通常は年間比較)で、比較する条件が異なることにあります。照明設備などのように消費電力が一定の場合には比較的簡単に検証できます。
例えば、分電盤で導入前後の消費電力を測定することにより、導入前後での差分が求まります。その差分に点灯時間を掛ければ削減量とすることができます。
この場合でも間引き点灯やゾーン毎に管理されていたりすれば、単純に点灯時間を求めることはできません。このように比較的簡単と考えられる負荷であっても簡単なことではありません。
ましてや空調設備などは外気温などの諸条件により消費エネルギーが異なる訳ですから、導入前後で単純に比較することができません。
このような場合によく採られる手法が、過去3年分のエネルギーデータと月別の平均気温との相関関係を求めて、
これをベースラインと称し、これを基準として評価時点での平均気温によるエネルギー値を求めます。
この求めた値と実績値とを比較することによって効果を実証しようとするものです。
一見合理的にみえますが、これすら万能ではありません。例えば、設備が変わった、生産量が変わった、稼働時間が変わったとか諸条件が変化するとベースラインの手法でも困難が伴います。
省エネではないのですが、重油が高くなる前に自家発電設備によるESCOが流行っていました。
ESCO業者が発電機の設置その他のサービスを提供し、1kWh当り何円で販売するといった契約をしておりました。
この場合には積算電力量計により明確に計量できますので疑問の生じる余地はありません。
同様に井戸水を浄水して供給する場合も同様です。流量計で計量できますので、1m3当り何円で販売するといったことが可能となります。
電力会社や水道事業者から購入する単価より安く購入できれば、その方がお得であるということは議論を待たないところです。
これらのケースは、計量器という客観的な基準があるので、使った分だけ支払うといった問題に簡単に帰着できるのです。
しかし、省エネルギー効果検証の場合には先述のベースラインですら客観的な基準とは言い難いのです。
しからば導入設備に計量器を取り付けて計測すれば良いじゃないかという議論になろうかと思いますが、計量器を取付けることで正確な使用状況の把握はできるようになります。
しかしながら計量器を取付けて正確なベースラインを算定したところで、条件が変化すれば無意味になってしまう可能性があることは先述の通りです。
このことは、計測すること自体を否定しているものではありません。
「第36話 見える化によるコストダウン」で指摘しておりますように「見える化」することで、
分析の手段としてのデータを取得することは重要なことです。客観的データ無しに分析しても価値ある結果を得ることはできません。
ただ省エネ効果検証といった側面に限っては、マクロ的なデータとミクロ的なデータを比較しても大差ないということを言いたいのです。
であればどうするかです。
結論的には、契約をどうするかといったことになります。
正確な実証が困難な以上、契約によって縛りをかけるようにするしかありません。契約で少なくとも最低保証が明確な基準で示されることが必要でしょう。
また、契約は長期に渡るものですから中途解約の条件などが不利とならないように留意すべきです。
更に、大企業といえども倒産リスクはありますが信頼のおける業者であることも重要な要素であります。
契約期間中にサービスの提供を受けられなくなり、かつ債務だけが残ってしまうような契約は、少なくとも締結すべきではありません。
省エネ業者も効果検証方法の確立に努力を傾注すべきです。それまでの間は、顧客との契約によって効果検証の補完をすべきであると考えます。
そして地道に研鑽を積み顧客からの信頼を得ることによって、一刻も早く市民権を獲得できることを願ってやみません。
<参 考>
第4話 省エネ提案書の不思議
第5話 コストダウンと省エネルギー
第9話 悪徳省エネ業者
第39話 省エネ商法について
2009/01/25新規
2009/01/28更新
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