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第4話 省エネ提案書の不思議

 省エネ業者から提案される省エネルギー提案書には、いくつかの共通点があります。
省エネルギー効果と導入費用が記載されているのは当然のこととして、 その一つとして、省エネ効果を金額で評価した場合の費用対効果(導入費用/経済効果)が3年未満で償却できるようになっていることです。
例えば、省エネ効果が100万円/年とすると導入費用が290万円といった具合です。
「償却が3年を切らなければ売れないよ!」これは、当方が業界(メーカー)にいたときに代理店からよく言われたことです。
その根拠が何処にあるのかは判りません。ユーザー側の要求なのか、省エネ業者の勝手な思い込みなのか、経験法則なのか、いわば業界の定説みたいなものでありました。 私はこのことを勝手に償却期間3年の法則と呼んでおります。

 そうした状況のなかで提案書を作成する際にどのようなことが行われているのでしょう。
エネルギーデータや現場調査の結果を基に省エネ効果を試算し、システム導入費用を見積もります。その結果、償却年数が3.1年になったとしましょう。
このような提案書は、代理店や営業担当によって確実に改変(あくまでも修正ではない)され償却年数が2.8とか2.9年にされてしまいます。
このための手法としては、業者利益を圧縮し導入費用を安く変更するか、省エネ効果を大きくするかの何れかの方法しかありません。
前者の場合は、まだ良心的な方法ですので問題はありません(あまりにも値引き幅が大きすぎると工事などで手抜きになる恐れがなきにしもあらずですが)。
後者の場合には、後々トラブルの種となります。省エネ効果を大きく謳い過ぎる(業界では、「ふかす」ということもあります)と導入後に期待した効果を得られず、 見苦しい言い訳をせざるを得なくなります。

 技術サイドとして省エネ効果を計算する場合、ある程度の安全率を見込むことが普通でしょう。これも業者によって手法が異なりますので結局は業者の誠意によらざるを得ません。

 それから、代理店からよく言われていたことが定価を公表してもらっては困るということです。
つまり、費用対効果が良い場合、例えば償却年数が1.5年だとすると導入費用を大きくして償却年数を2.5年とすれば、その分だけ利益を大きく取れるようになります。 定価が公表されていれば、工事費などに上乗せするしかありませんが、それには限度があります。導入費用にはそうしたからくりがあります。
 時には、「オイオイ、どこまで儲ければ気が済むのかい!」と言いたいこともありました。

 償却年数が、3年を微妙に下回る場合には、恐らく何らかの調整が行われていると思われます。
前者(導入費用を値引いて対処)のケースであればよいのですが・・・。これを見分けるのはなかなか難しいでしょう。

 別の共通点として、リースやレンタルが併記されていることです。これは、月々の省エネ効果がリース料金より大きければ初期費用の発生無しにシステムの導入を可能にするもので、 特段問題はありません。但し、省エネ効果が大きく謳ってなければの話です。
期待した省エネ効果が得られない場合で、特に{省エネ効果<リース料金}となれば費用の増大となってしまいます。
 ここでも償却年数のケースと同様に、{省エネ効果−リース料=純利益}の構図が描かれます。この場合の純利益額が如何ほど以上ならばといった定説は知りません。
営業担当者や代理店が、ユーザーの顔色を窺いながら調整しているようです。今日もどこかで虚々実々の攻防戦がくりひろげられていることでしょう。

<参 考>
 第5話 コストダウンと省エネルギー
 第9話 悪徳省エネ業者
 第39話 省エネ商法について
 第47話 省エネルギー効果検証について

2008/04/29新規

2009/01/28更新


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