第114話 省エネ・節電製品について思うこと
先日ラジオを聴いておりましたら、中小企業を対象として省エネの専門家なる方を無料で派遣し、現場を調査して企業ごとにアドバイスしているという報道がありました。
車を運転しながら聴いていたものですから、正確ではないかも知れませんが、都内のとあるメッキ工場のケースでした。そのアドバイスの中で、工場の屋根の話がありまして、
屋根の温度は日射により70℃位になることもある。これが冷房エネルギーを増加させている原因となっているので、熱を反射する特殊な塗料を塗布すれば、屋根の温度が低下し、
冷房に要するエネルギーが減少する。その工事に百数十万円掛るが、数年で取り戻すことが出来る。提案を受けた企業は前向きに検討しているとのことでした。
さて皆さんが、もしこのような提案を受けたらどうされますか?
例えば、冷房の電気代の減少分で、施工代が2.5年で償却できるといった提案が出されたとします。この工事を発注しますか?
私ならば、採用しないと思います。但し、年間電気料金の削減を何らかの形で補償してくれるとすれば別ですが・・・。
では何故採用しないかという理由ですが、この提案は冷房に関することだけについてしかなされていないからです。確かに反射塗料で冷房負荷は減少するでしょう。
しかし暖房負荷については何ら議論されておりません。やはり年間を通してどのように評価できるのかを議論しなければならないと思います。
次に省エネ業者の提案であればいざ知らず、省エネの専門家との触れ込みでなされた提案ですから、他に考えうる代替手段についても議論する必要があるでしょう。
省エネ業者であれば、自身が担いでいる製品の提案をするのが当たり前ですし、受ける側もその心算で検討します。しかし専門家たるもの提案に関する客観性が必要でしょう。
本件で言えば、熱は天井周辺にこもるものです。工場では天井が高いのが一般的です。冷房は床面から2〜2.5メートル程度の部分に効けば充分でしょう。
天井近くまで冷房が必要な例は稀だと思います。であれば工場の垂直方向全般に渡る冷気の循環は不要なはずです。つまり工場内空間を上層と下層(上層・中層・下層でも構いません)に
分けてしまう方法(何も物理的に分ける必要はありません。温度分布を分けることができれば事足ります。)が考えられます。これは空調のゾーニングといった考え方です。
下層は作業空間ですからここに集中的に冷気が及ぶようにします。一方上層は工場内で発生する熱と天井の熱が自然に集まります。ですからこの熱を抜いてやれば良いのです。
そのためには上層部の空気を抜くような通気口や排風機を設置すれば実現できます。こちらの方が随分と安上がりで済むと思います。
逆に暖房時には暖気が上層部に集まりますので、この暖気を下層に循環(上層の暖かい空気を下層に移動)させることにより暖房エネルギーを減少させることができます。
反射塗料はせっかくの太陽の恵みをお断りするという効果になってしまうことにもなりかねません。
これに似たような考え方が、窓ガラスが熱を透過し難いような材質にしたものや遮光フィルムを貼ったりというものです。確かに冷房時には効果的です。
しかし、暖房時にはどうなるのでしょうか?
窓ガラスを入れかえますか?
遮光フィルムをはがしますか?
毎年そんな手間隙はかけられないでしょう?
冷房時には日射を減らし、暖房時には積極的に日射を取り入れるようにした方が効果的です。そのための工夫が昔ながらの「よしず」や「グリーンカーテン(緑のカーテン)」です。
窓への直射日光を遮ります。グリーンカーテンの場合には、更に植物の蒸散作用で周囲の温度を下げる効果も期待できます。
「よしず」と似たような効果が期待できるのが「外ブラインド」です。通常、ブラインドは室内側に設置しますが、これを外側に設置したものです。
このように一側面から見ると効果的であると思われるものも別の側面から眺めると逆効果となるものがあります。これは何も省エネ・節電製品に限るものではありません。
世の中の多くの事柄は、このように考えてみることが必要だと思います。
今回は反射塗料や遮光フィルムなどを槍玉に挙げました。しかし、これら製品も状況によっては提案通りの効果を期待できる場合もあります。
地域や個別企業毎の事情の違いがありますので、個別具体的な事案毎に検討すべきです。あくまでも一般論としての見解であることをご理解いただきたいと思います。
そして、その他省エネ・節電製品に関して色々と問題があるものが多々あるものと思います。
大体において提案というものは、物事の一面を取り上げたものとなっていることが多いものです。ですから多角的視野からの検討が必要となります。
採用される場合には、そのような観点からよくよくご検討いただきたいと思います。
<参 考>
第4話 省エネ提案書の不思議
第5話 コストダウンと省エネルギー
第9話 悪徳省エネ業者
第39話 省エネ商法について
第47話 省エネルギー効果検証について
<2013/06/10 追記>
「「節電塗装」に関する新聞記事について」
「熱交換塗料が熱を消す???」
2011/06/27新規
2013/06/10更新
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