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第61話 行政書士について

 「士業」ときいてピンとくる方は少ないかと思います。
いわゆる資格を持って独立開業した、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、社会保険労務士、・・・のように最後に「士」の付く職業のことを言います。 (私は第一種電気工事士でもありますが、これは「士業」には入らないようです。)

 これらを名乗るためには、それぞれの資格が必要となります。試験免除者を除けば試験に合格する必要があります。 合格しただけでは、例えば「行政書士 山浦清美」と名乗ることはできません。行政書士の場合には、県単位にある行政書士会を経由して入会手続きを行い、 日本行政書士会連合会の名簿に登録される必要があります。名簿に登録されて、晴れて「行政書士 山浦清美」と名乗ることが出来ます。

 開業したからといって、特別顔が広いとか既に顧客がいて独立するなどした場合を除いて仕事が舞い込んでくることはあり得ません。 あらゆる手づるを辿って地道に営業するしかありません。
 ほとんどの新規開業者は「武士は喰わねど高楊枝」という状況になるものと思われます。ここからが辛抱のしどころです。
しかし、多くの新参者は三年以内に無残にも廃業の憂き目にあうものと思われます。 (私の場合には、「第3話 省エネルギーと行政書士(3)」で書きましたように二足の草鞋でしのいできました。)
「士業」を「自由業」として憧れ、試験勉強に励み、独立開業し、営業努力はしてみたものの待っているのは「餓える自由」なのです。これが現実です。
 そのなかでも少数の強兵が生き残って栄華を極めて行くのです。

 これとは別に資格試験のための受験産業があります。こちらの方は、「士業」の夢が大きく語られます。 それは当然と言えば当然のことです。受験者が多くいてこそ産業として成立する訳ですから、大いに夢を語らなければなりません。 「独立開業しても喰っていけませんよ!」なんて口が裂けたって言うはずもありません。

 更に、資格はとっても独立開業するためには実務ノウハウが必要となります。資格者のためにこれらの実務ノウハウを教えるといった講座もあります。 行政書士そのもので喰っている人たちより、受験や実務講座で喰っている人の方が多いのではないかと思うくらいです。

 行政書士は元々「代書人」という制度から派生したものです。弁護士は「代言人」といわれていたものです。
元々の代書人から、それぞれの専門業務(法務→司法書士、税務→税理士、労働・社会保険→社会保険労務士、・・・)が独立した資格となって行きました。 そして、それら美味しい業務の抜け殻が行政書士なのです。
独立した資格となったのは、それで充分に喰えるからなのです。喰える資格がどんどん独立した資格になり、喰っていけないものが残されているといっても過言ではないでしょう。
それでも、まだまだ喰える業務も残っています。しかしながら、その喰える業務もどんどん侵食されてきております。
 そして、その残り物の業務を奪い合っている状況にあるといえるのかも知れません。

 そういう中にあって、新たな業務開拓を積極的に行っている行政書士も数多くいます。他士業が参入できない業務を開拓してきているのです。
行政書士以外の士業は、業務が限定列挙的に制限されています。つまり業務が限られているから最終的にはパイの分け合いになります。従って、喰っていける人数が限られます。
 しかし他の法令で制限されていない限り、新規業務分野は自動的に行政書士の業務となる可能性を秘めています。
つまり新しい業務は全て行政書士の業務だと考え、いち早く参入することにより、その業務分野に確固たる地歩を築く必要があるのです。

ここに行政書士の生きていく道があるのではないでしょうか?

 そのためには常に時代を先取りして、新しいビジネスに敏感になる必要があるでしょう。あるいは自らが新しいビジネスを構築していく必要があるのかも知れません。

 現在、行政書士を目指して頑張っている方に冷や水を浴びせかけることになったかも知れません。しかしながら、現実は厳しいのです。これは行政書士に限らず、 他の士業でも同様でしょう。あるいは他のあらゆる職種でも同様であることなのかも知れません。


<参 考>
 第1話 省エネルギーと行政書士(1)−文系と理系
 第2話 省エネルギーと行政書士(2)
 第96話 省エネルギーと行政書士(4)−省エネ実務研究会

2009/03/30新規

2010/09/23更新


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