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第123話 電子ブレーカー(節電ブレーカー)を導入する前に

   「電子ブレーカー」を「節電ブレーカー」と称して販売されているようですが、「第45話 電子ブレーカーについて」 で書いておりますように「電子ブレーカー」で省エネや節電を行うことはできません。
 「電子ブレーカー」は、そもそもコストダウンを図るためのツールです。ですから、少なくとも節電を謳うことについては、如何なものかと考える次第です。 何もコストダウンが悪いと言っているわけではありません。私のコストダウンに関する考えは「第5話 コストダウンと省エネルギー」 に書いている通りです。

 昨年の夏、ピーク電力をカットするため契約アンペアを落とそうといった動きがありました。例えば、40Aで契約しているものを30Aに落とそうといったものです。 この方法は、確かにピークカットに対して有効に働くでしょう。しかし、これと「節電ブレーカー」とは全く関係がありません。「節電ブレーカー」なるものを 導入せずとも、電力会社に申し込めば基本無料で交換してくれます。おまけに落とした分の基本料金が安くなります。

 前置きはこれくらいにして、コストダウンのためどうしても「電子ブレーカー」を導入したいとお考えでしたら、最低限次の事項を検討してからにしてください。

 「電子ブレーカー」を導入して一番困ること、それはブレーカーが頻繁にトリップ(落ちること)することでしょう。 ブレーカーがトリップすれば、動力部分が全停電してしまい、生産活動などに重大な支障が生じることにもなりかねません。

 では、何故このようなことになってしまうのでしょうか?

 この最大の要因は現場調査の不備から来ております。通常は営業マンや技術担当者が、現場を訪問し電流測定を行います。また、負荷の使用状況などの聞き取り調査も行われます。 これらの情報からどれ位の契約が適当であるかを判断し、提案書(見積を含む)が作成されます。

 販売業者からすれば、この現場調査のコストを削減したいし、早く契約を取りたいといった気持が働きます。現場調査に手間を取っていると、競争相手が現れたり、 専門家に相談する時間を与えたりといったことにもなりかねません。
 ですから、この電流測定期間は精々が一週間程度といったところでしょうか、極端な例では一昼夜とかたった数時間といったこともあるようです。
エアコンを使用している事業所などでは、基本一年間測定しなければ正確な情報は得られません。特にエアコン使用の端境期に測定したものであれば、 極端に精度が悪くなってしまいます。

 そして、提案書を作成するに際しては、一定の安全率を考慮して契約容量を決定すべきものです。 しかしながら「第4話 省エネ提案書の不思議」で書いておりますような諸事情により提案書なるものが作成されております。 結果、頻繁にブレーカーがトリップする事態が発生してしまう可能性が生まれてしまいます。
 先ずは、現場調査が充分に実施され、誠実に提案書が作成が作成されていることを確認しましょう。不明な場合には、専門家のセカンド・オピニオンを求めることです。

 次に、導入の形態です。現金一括で買い取るケースは少なく、そのほとんどはリースやレンタルあるいは割賦販売と思われます。 これは、「第39話 省エネ商法について」で書いておりますように

 電気料金削減(月額) − 支払月額 = 純利益

といった構図を作る必要があるからです。 つまり、月々導入費用を支払っても電気料金が削減された分でお釣りがきますといったことにすることによって売りやすくしているわけです。
 これについては特段問題ないのですが、いざトラブルが発生すると問題の解決を複雑にしてしまいます。例えば、頻繁にブレーカーがトリップして業務に支障が出るようになったため解約したいと申し出ても、 リース料や割賦の残債が残ってしまいます。
 導入の形態として、メリットが確定した金額について、業者と需要家が分け合う、いわゆるシェアードESCO方式の活用も重要になってくると考えます。 この際には、種々のトラブルを想定して、これらが発生した場合の対処方法も予めESCO契約書に盛り込むようにしてください。 また、電力会社との関係でいえば、契約変更して一年以内の契約変更は、違約金の対象ともなりかねません。これらの事項も当然契約書に入れておきましょう。

 更に、導入費用についてです。契約容量にもよるでしょうが、一般的に50万円程度で販売されているようです。 昨年でしたか、80万円程度で販売されていたといった報道もありました。このような高額販売となると例え「電子ブレーカー」で基本料金を大きく削減できたとしても、 通常のブレーカーでチョッピリ削減した方が費用対効果としては後者が良くなるケースもあるでしょう。
 導入費用に関しては、当方がとやかく言う筋合いのものではありませんが、少なくとも相見積を取るなど、比較検討してみることが大切であろうと考えます。

 その他、細々とあるにはありますが、最低限必要な事項についてのみ指摘しておくことにします。

 また、ここでは「電子ブレーカー(節電ブレーカー)」を話題にしましたが、その他の省エネ・節電製品についても色々と問題点があります。 「第122話 省エネ・節電トラブル急増中」に資料等を掲載しておりますので、ご参照いただければと存じます。

2012/05/30新規


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