第80話 株価予測システム−その2
以前「株価予測システム」なるものは存在しないと書きました。
それにしても株で儲ける方法などといった類の書籍の多さは呆れるほどです。そしてシステム売買なるものも相当数にのぼっております。
果たして、これらを読んだり活用して儲けた方は如何ほどいらっしゃるのでしょうか?
幸いにして(不幸にしてかも?)、私はこのような類のことは信用していないので、損をすることはありませんでした。(従って濡れ手に粟の大儲けもしてませんが・・・。)
さて、何故に私はそのような事柄を信用しないのかといったことを以下に述べてみたいと思います。
もしも私が絶対に儲かる方法を発見したとしたらどのような行動をとるでしょうか?
ただひたすら一生喰っていけるだけの金を稼いで、後はのんびりと人生を楽しむことでしょう。即ち、発見した事実を自分が充分稼ぐまでひたすら隠すことでしょう。
なぜなら取引はゼロサムゲームだからです。参加者全員がハッピーな結末を迎えることはできません。
ですから、人に教えたら分け前がその分減少してしまいます。誰かに教えたら必ず伝播します。皆が同じ手法を用いるようになるとその手法は通用しなくなります。
即ち、一人しか知らない場合には市場に大きな影響はありませんが、同様の参加者が多くなればなるほど市場に大きな影響を与えるようになります。
そうすると参加者が少なかったときには有効であり得た手法が、全く同じことを行う大勢の参加者のために霍乱されて有効性が失われるのです。
従って、有効な手法を世間に公表するのは自殺行為に他なりません。ですから自分がもう充分儲けてしまうまで、世間に知れ渡る心配は無用なのです。
つまりは、そのような方法を知ることはできないということですし、万一知った時には既に遅しということになるのです。
同じようなことがインサイダー情報にも言えます。少人数しか知らないからこそインサイダー情報の価値があるのです。
皆が知ってしまえばインサイダー情報の価値は無くなってしまいます。
多くの書籍や方法の類は、相場で儲けることができない方々がそのようなノウハウ本を書くことによって儲けたいからに他ならないと睨んでいます。
そんなに楽して儲けられたとしたら、第一執筆するなどといった大変な作業をすると思いますか?
私なら御免被ります。そんな暇があったら、自分のやりたいことが山のようにありますので、迷わずその方向へ行ってしまいます。
実際に儲けた実績を書いたというケースもあるでしょうが、それは偶々運が良かったに過ぎないと思います。長期間儲け続けられるかどうかは誰にもわかりません。
一時的に大儲けした人は、大損する可能性すら抱えているとも思います。まぁ、宝くじにでも当たったと思っておいた方が無難だと思います。
これは穿った見方かもしれませんが、自分の都合の良い方向へ人を誘導するために情報が提供されている可能性すら考えられます。
システム売買では、市場の情報をリアルタイムにせよリアルタイムで無いにせよ同じ情報をプログラムに与え情報処理するわけですから、全て同じアウトプットとなるはずです。
そうすると先に書いたように既に有効な手法たりえません。
しかし、このシステムの利用者が市場に影響を与えるほど多数いたとするとその開発者たるものは一人儲けることができます。
システムの開発者はどのような情報で、どのようなアウトプットが出るか熟知している訳ですから、それより一瞬でも早く市場で買うことが可能(そのようにプログラミングすることも可能)です。
そして、その後システムが一斉に買いのサインを出します。そうするとこのシステムによる参加者が市場が無視できないくらい多数であれば、価格が上昇します。
当然売りの場合も同様に一瞬先に売り抜けすることが可能です。
このようにして、他者の犠牲の上に立って一人だけ確実に儲けることが可能となります。
世の中のシステム売買が全てそのようになっているといっている訳ではありません。そのような可能性も考えられると指摘しているに過ぎません。
くれぐれも誤解が無いようにお願いします。
これでもまだ「株価予測システム」を信じますか?
<参 考>
「第79話 金融工学って何?」
2009/09/12新規
「第38話 株価予測システム」
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