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第79話 金融工学って何?

  新聞に金融工学を解説した記事があり、そこに正規分布のグラフが描いてありました。「エッ、金融工学ってもしかして正規分布使ってるの?」と一瞬愕然としてしまいました。 そこで、ネットで"金融工学 正規分布”で検索してみると、どうも金融工学なるものは正規分布の上に成り立っているもののようです。

 私の常識からすると、このような現象を説明するのに正規分布を使うことはあり得ないことだと考えておりましたので、まさに虚をつかれた思いがしました。
勿論、私の常識が非常識であることも考えられますし、「このど素人が何を言うか!」といわれそうですので、一つ文献を引用させていただきます。

 ジョン・ボリンジャー著・飯田恒夫訳
 「ボリンジャーバンド入門」-相対原理が解き明かすマーケットの仕組み(パンローリング刊)

   第9章 統計 (P121〜P128)

 John Bollinger「BOLLINGER ON BOLLINGER BANDS」(McGraw-Hill)

   CHAPTER 9 STATISTICS (P68〜P73)

 ここに次のような記述があります。

以下引用−
「〜株価で試してみると〜、これは、株価が正規分布しないこと、さらに通常適用できると考えていた統計上の法則が 適用できるとはかぎらないことを意味する」

−途中省略−

「株価が正規分布しないこと、さらに通常使用されるサンプル数が少ないことによって統計学的推理の多くは使えないが、適用できそうな統計学上の発想もある」
−以上引用終わり

と述べております。

 一般的には統計学的手法は適用できないが、使えるものもあるということでしょう。つまり、使えそうなものがあれば、便宜的に適用限界をわきまえて使っちゃいましょう といったことであると思います。使ってみて上手く現象を説明でき、そして結果オーライなのですから確かに言わんとすることも分かります。
 しかし、少なくとも実用上の必要はないにしても学問的にはその奥に潜むものを探求することが必要なのではないでしょうか?

 ちなみに著者のボリンジャー氏は言わずと知れたボリンジャーバンドの考案者です。私も株を少し扱っておりますので、以前から株価予測に感心がありました。 特にテクニカル分析について色々な書籍で勉強してみました。引用したものもその内の一つです。
 しかし、「第38話 株価予測システム」でも書きましたように、現在はこれらの考えに懐疑的になっております。
かといってファンダメンタル分析も当てになりません。これらの手法は、ほんの気休め程度に考えていた方が良いように思います。これらを懸命に研究しておられる方には 申し訳ありませんが時間の浪費に過ぎないような気がしております。

 このような時に出会ったのが、この正規分布の一件です。
そして、Web上の情報を読んでみても正規分布に従っていないこと知りつつも正規分布を用いてモデルを構築しているようです。これは正規分布を用いた方が取り扱いが 簡単だからでしょう。
数学的なお遊びであれば、それも結構でしょう。しかし、現実に金が動く世界です。自分の金だけでしたら、それもご勝手にの世界で済みますが、投資信託など 他人の金を運用している場合には、お遊びでは済まされないでしょう。
ましてや退職金など老後のための資金を運用されている方々はどうなりますか?
リスクを承知で投資しているのだから損してもしょうがない世界といってでも済まされてしまうのでしょうか?
 投資する側も金融工学を駆使すればバラ色の世界が開けているなどといった幻想を一刻も早く捨て去り、現実の世界のことを考えていこうではありませんか?

 投資は自己責任とは良く言ったものです。身包み剥がされないうちに自分の身を守ることを考えてください。

2009/09/08新規


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