第116話 電田プロジェクトについて思うこと
耕作放棄地などに太陽光パネルを設置し、自然エネルギーの割合を増加させようという提案であります。これに多くの自治体が賛意を示しているといいます。
耕作放棄地の有効活用を図り、電力不足を補う一石二鳥の提案のようにも思えます。
さて、その狙いは何なのかといったことです。やはり発電利権への切り込みでしょう。過去、通信利権へ切り込んだように。その功罪はさておき、その次に
農地転用制度に風穴を開けようとの狙いがあると思います。何をやるにしても農地転用問題が絡んできます。もっと農地が自由に利用できるようになればと誰しも考えることでしょう。
この際、電力問題を契機として、これらに切り込んでいければと考えるのは自然な流れかと思います。
このような観点から「電田プロジェクト」を眺めてみると、やはり金儲けの匂いがしてきます。長期間に渡る固定価格での全量買取は利益の保証となります。
主張するだけならば、良くぞ言ってくれたとなるのですが、株主総会において定款変更までして発電ビジネスに参入するということは、
そのように見られても仕方ないことだと思います。
「使われていない土地を国難の時に使うべき」との主張ですが、国難をビジネスチャンスと捉えているとの謗りは免れえぬところだと思います。
次に農地の利用ということで言えば、太陽光パネルを設置すると長期間(おそらく20年程度)に渡り土地の使用目的が固定されてしまいます。
仮設とは仰いますが、多額の投資を行い一旦設置したものを簡単に現状復帰できるものでしょうか。また太陽光パネルの設置により、
土壌環境が非可逆的な変化をしてしまう可能性もあります。一旦農地を転用すると農地に戻すことは極めて困難になります。
この間、食料事情の変化が無いと誰が言い切れるでしょうか。
耕作放棄地ならば直ぐにでも農地として利用可能です。食料安保の観点から言っても農地の転用は抑制すべきです。
耕作放棄地以外に方法が無いのであれば致し方ないことだと思います。しかし、大抵の屋根はまだまだスペースがあります。
何も耕作放棄地に設置する必要はないのです。
一般家庭に太陽光パネルの設置が進まないのは費用対効果が大変悪いからです。固定価格・全量買取制度が実施されればかなり好転するとは思います。
しかし、個人投資に任せていたらなかなか進展しないでしょう。以前「 第19話 排出権取引と排出抑制」でも書きましたが、
家庭の屋根に太陽光パネルを無償設置することで、爆発的に導入を促進させることができます。設置者は全量買取制度を前提として、発電量の全量を売電します。
各家庭には「発電量-消費電力量」つまり余剰電力量分について屋根の使用料として配当します。「消費電力量>発電量」の場合には家庭への配当がありませんが、
設置者は全量買取ですから設置費用の回収が可能となります。
家庭もより多くの配当を得るためには消費電力量を抑制する必要がありますので節電の動機付けとなります。
さて設置者の主体は誰がなるのでしょうか?
ビジネスとして成立すればESCO事業者が手を挙げるでしょうが、そのような動きは無いようです。(費用対効果が悪いのでビジネスとして成立する可能性が低い。)
ということは国策として実施しましょう。
お得意の天下り団体を設立して、税金を投入する方法でも良いではないですか?
要は、無駄なものに税金が投入されているから文句が出るのであって、必要なものに必要な投資を行うのに何もはばかる必要ありません。
耕作放棄地などにこだわらず、各家庭に設置する主体として、ソフトバンクさんが参入されるとすれば大いに賛同しますが、「電田プロジェクト」はどうもいただけません。
確かに各家庭に分散設置するより、広大な土地に集中的に設置した方が効率的でしょう。しかし、集中化した場合にはダメージも集中します。
集中化による弊害も考えておく必要があります。そして、利益を追求する企業のことですから、ビジネスとして成立しないとみるや撤退することは必然なことです。
そこに残されたのは形骸化された農地法だけといったことになりかねません。
<2011/07/20 追記>
「電田プロジェクトで」は休耕田も対象とされているようですが、休耕田とは一般的に生産調整(減反)で一定期間(私達のところでは1年間)稲作をしない水田のことをいいます。
稲作をしないだけであって他の作物(転作作物)を作付けしている場合がほとんどです。従って、休耕田に太陽光パネルを設置することなど論外です。ということで、本論では休耕田
については言及しておりません。
<参 考>
第76話 マイクロ水力発電への期待
第108話 計画停電解消に向けての提言
第112話 九州電力の15%節電要請について
2011/07/19新規
2011/07/20更新
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