第59話 操縦訓練記(12)−タッチアンドゴー−その6
今回は熊本空港(RJFT)に出かけてTGL訓練を行いました。
今回は私が熊本空港から佐賀空港(RJFS)までの帰りを操縦することとなりました。
熊本空港は高台の上にチョコンと乗っかっているような感じです。ですからトラフィックパターンは平地の上を飛びますので何となく違和感を覚えます。
それと佐賀空港(6フィート)も長崎空港(8フィート)も標高が低いところにあるのに対して熊本空港は632フィートとかなり高くなっております。
ですから高度計の読みも何時もと異なりますので、これにも少々戸惑いました。
そして空港が高台に孤立したように存在していますので、地形によって風が上下左右に偏向させられていますのでコースや高度に影響を与えます。
また長崎空港よりもトラフィックが多く、定期便や他のVFR機が飛行しておりますので、コースや高度の指示やトラフィックパターンでのホールドなどが頻繁に起こります。
ですからATCも繁雑になり、大体の流れは把握していても応用的なATCになると途端にお手上げ状態でしどろもどろになってしまいそうです。
帰りのフライトが思いやられます。
それに比べ佐賀空港はクロスウインドが多いことを除けば、穏やかな気流とトラフィックが少ないことなどなど訓練環境は抜群です。
つくづく佐賀空港で訓練を開始して良かったと思いました。
行きは後部座席で地形や地上目標の確認などをしてのんびりとフライトを楽しんでおりました。しかし、ATCが頻繁に入ってきますので、結構大変そうだなと感じた次第です。
昼食をとった後、いよいよ私の担当です。フライトプランを提出し、スポットに向かいます。ATISを聞くと海風が入ってきたのか使用滑走路が25に変更になっていました。
全てが狂い始めたのです。それまでは、RWY 07のつもりで頭の中でシミュレーションしていたものが全て逆転してしまったのです。慣れてしまえば何ということもないことでしょうが、
ビギナーにとっては一大試練です。せめてもの救いがクロスウインドながら5〜6ノット程度と午前中より弱まったことでしょう。
この時点でかなり舞い上がってしまったようです。グラウンドとのATCも必要な内容を抜かしてしまったりと散々でした。
ランナップを終え、タワーからテイクオフのクリアランスをもらい、滑走路に向けてタクシーしてふと「RWY 25はどっち?」とパニクリました。
已むを得ず教官に「どっちでしたっけ?」と聞いてしまいました。慣れていない空港と言えども何ともはや情けないことです。今から思えばDGなどで簡単に判ることなのですが・・・。
テイクオフ後トラフィックパターンの地上目標を教官から教わりながらダウンウインドに入り、ATCしようかなと思っていると高度が急に低くなってしまいました。
高度修正に戸惑っている最中に見かねたのかタワーからタッチアンドゴーのクリアランスが先に(ダウンウインドのリポートを指示されておりました)出てしまいました。
ベースレグに入ると今度は、急激に持ち上げられてしまい、再び高度修正に追われました。
これらの原因は、先述したように空港が高台の上にあり、その影響で気流が波を打つようになりダウンウインドで下降気流、ベースで上昇気流となって現れているものと思われます。
また、晴天でしたのでサーマル(熱上昇気流)の発生もあって、より気流の変化を複雑にしているものと思われます。
小型機はこのような気流の変化をもろに受けてしまいますので、ピッチやスロットルのコントロールを的確に操作する必要があります。
また、タッチアンドゴーの場合には、何度も同じパターンを飛行するので、このような気流の変化を予想すると言うか先取りして事前に対処することも必要でしょう。
はっきり言って今回のフライトでは自分の技量の未熟な点が露呈したと思います。静謐な気流の中や佐賀空港といった慣れた場所でのいわゆるワンパターン的な操縦操作に
ついては何とか身についてきているけれども、それから少しでも外れてしまうと途端にダメになってしまう。つまり応用が効かない、臨機応変に対処できていないということです。
今回のフライトは、そんな弱点をすかさず突いてきたのです。
かなりガタガタでしたがタッチアンドゴーの回数をこなし、一路佐賀空港へ向けて帰途につきました。大牟田方面に向けて一直線にレベルフライトし、ここからは慣れたルートです。
佐賀空港の風も穏やかで、ランディングするのみとファイナルアプローチをしておりますと接地間際に突然「ゴーアラウンド!」の声が掛かりました。
どこかでゴーアラウンドを一回入れると宣言されていたのを忘れてしまって、ファイナルも結構うまくできていたのですっかり油断しきっていました。
一瞬「何で?」と状況把握ができませんでした。ワンテンポ遅れてスロットルを全開にしましたが、ピッチを抑えるのが少々遅くなってしまい大きく機首上げ姿勢になってしまいました。
まさに失速寸前、最悪の状況に陥れてしまいました。フラップもいきなりフルフラップから10°まで上げてしまいました。
とりあえず最悪の事態は回避できましたが、本当に油断大敵です。一寸した気の緩みが事故を招きかねないことを身をもって体験させられました。
今回の熊本行きは、反省点を多々提供してくれました。前回までの感じで何となく掴みかけてきたかなと思っていたものが粉々に吹き飛ばされてしまいました。
基本に立ち戻って、一から出直しするくらいの気持ちで取組まなくてはならないと思っております。
かなり凹んでしまいましたけれども収穫の多いフライトであったと思います。
とうとう着陸100回を超えてしまいました。
今後の予定は、次回の訓練は別の教官にフライトチェック(Pre Solo Check)してもらい、その結果がOKならば、その次の訓練日の天候次第ではファーストソロ(First Solo)の可能性があるとのことです。
自分としてはまだまだの感じがするのですが、何れは通らなくてはならない関門ですから、チャンスが巡ってきたらチャレンジするつもりです。
現在までフライト回数24回、着陸回数105回、総飛行時間22時間40分となりました。
RUNWAY 07からのテイクオフ
RUNWAY 07 ダウンウインドレグ
RUNWAY 07 ベースレグ
RUNWAY 07へのファイナルアプローチ
2009/03/15新規
2009/03/29更新
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