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第40話 操縦訓練記(6)−タッチアンドゴー(Touch and Go)

 いよいよランディングの訓練が始まりました。前回はスローフライトとエマージェンシーを実施した後でタッチアンドゴー(連続離着陸訓練)を2回行いフルストップしました。 初めて行ったのですが、とにかく忙しいこと忙しいこと。着陸した後、停止せずに離陸してトラフィックパターン(場周経路)を周回して、再度着陸することの繰り返しなのですが、 この間にやらなければならないことが沢山あります。全てが後手後手に廻ってしまいました。

 教官によれば、ランディングの良し悪しはトラフィックパターンを如何に正確(高度を含めて)に廻ることができるかによって決まるといっても過言ではないということです。
前回は風も弱く(4〜5ノット程度の横風)、初練習には丁度良い状況でした。にも関わらず、センターラインに合わせることができずフラフラと進入してしまいました。 また、エアスピードも守れず教官から厳しく指摘されてしまいました。
風が強い(佐賀空港は横風を受けることが多い)場合には、難しさが倍加することでしょう。

 スローフライトの訓練で特に感じるのが、飛行機(単発プロペラ機)の特性です。プロペラ後流、ジャイロ効果、プロペラファクター(Pファクター)の影響を強く受けます。 このためエルロンやラダーでこれらの影響を取り除かないと直線飛行ができません。 特にラダーは常に操作しなければなりません。私は常にラダーの操作が疎かになってしまいます。そしていつの間にか目標から逸れてしまうのです。

 自分の頭を整理するためにも若干このような特性について述べてみたいと思います。
プロペラ後流とは、プロペラが回転することにより発生する空気の流れです。C172P(多くの単発機も同様と思いますが)プロペラは操縦席から見て右廻り(Clockwise)です。 プロペラが回転すると後方に向けて空気の流れが発生し、これを推進力としています。この気流が真直ぐ後方に流れれば何事も無いのですが、プロペラの回転により気流も僅かに回転させられます。
この回転しながら胴体を包み込むように螺旋状に後方へ流れる気流は、主翼に当り右ロールを発生させ、 垂直尾翼に当り左ヨーを発生(垂直尾翼が上下対称であれば右ロールが発生するのですが、下部がないものですからこの部分は素通りし、上部だけの効果が現れることとなります。)させます。 水平尾翼については、主翼に比べれば無視できるほど小さいものと思われます(これも私の推測)。
 主翼による右ロールはプロペラの回転の反作用による左ロールで一部相殺されます。また機体設計時に主翼の取付角や上反角でバランスするようになっているものと思われます(これも私の推測)。
垂直尾翼についても取付角によって補正されていますが、対気速度の大小によってヨーが発生(左右いずれかに)してしまいます。通常は巡航速度でニュートラルになるように調整されているものと思われます(これも私の推測)。
したがって巡航速度以外ではラダーを当てる必要が出てきます。
特に低速時(スローフライトやテイクオフ)に回転数を急に増加させると思い切りお尻が右に振られます。これを防ぐために右ラダーが必要になります。

 次にジャイロ効果です。回転体は慣性モーメントを持っています。これに外力を加えると加えた外力と直角方向(回転を進めた方向)に力が働きます。
これをプロペラに当てはめると、プロペラは操縦席から見て右回りに回転していますので、ここで右旋回(左旋回)をしたとすると機首下げ(機首上げ)方向に力が働きます。 同様に機首上げ(機首下げ)すると右方向(左方向)に力が働きます。ここでもラダーの操作が必要になってきます。

 更にもう一つプロペラファクターというのがあります。プロペラとういものはいわば翼が回転しているようなものです。ヘリコプター(回転翼機)を連想すればお解かりいただけるかとおもいます。 翼は気流に対する角度(迎え角)に比例して揚力を発生します。プロペラは機軸にほぼ垂直に取付けられておりますので、機首が水平の場合には気流は前方から均等に流れますので迎え角も同じです。 しかし、機首上げすると気流がその分だけ相対的にプロペラの下方向から来るようになりますので、 操縦席から見て右回りに回転している場合には上昇側のプロペラより下降側のプロペラの迎え角が大きくなります。 その結果、機首上げ(機首下げ)で左ヨー(右ヨー)が働きます。
スローフライトの時には大きく機首上げして飛行しますので、この場合にもラダーの操作が必要になってきます。

 このように知識としては理解しているつもりでも、いざ実機の操縦となると思うように行きません。パワーを入れると同時に右ラダーが自然に入るようにならないといけません。 お尻が振られて慌ててラダーを操作するようでは遅すぎます。遅すぎると過剰に操作しすぎてしまいます。そんなことの繰り返しです。
何時になったらまともにできるようになるかと思うと気が滅入ってしまいます。

 現在までフライト回数10回、着陸回数12回、総飛行時間9時間10分となりました。

2008/11/22新規

2009/01/31更新

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