ティータイム


第29話 操縦訓練記(2)−初フライト

 記念すべき初フライト。アッという間の45分でした。

 午前中は1時間ほど座学で空港関連情報の入手法などを学んだ後、実機でチェックリストに従った外部点検方法を教わりました。
昼食を挟んで午後は待望の初フライトです。もっと緊張するかと思っておりましたが、淡々と時間が経過していくような感じでした。
同乗訓練するY氏(共に今日が初フライト)とジャンケンで順番を決めましたところ、目出度く私が先行の誉を得てしまいました。

 エプロンに駐機しているC172Pに近づいていくと、いよいよだなという期待感と緊張感が綯い交ぜになったような気持ちの高ぶりを感じました。
再度外部点検を今度は二人で実施し、操縦席へ着座しました。さらにチェックリストに従って次々に操作していきます。
計器やスイッチなどの位置を憶えるのも一苦労です。ようやくエンジン始動です。この操作は自動車と同じですから、ここだけは意外とスムーズにことが運びました。 エンジンがかかると熱気むんむんのコクピットに強力扇風機(プロペラ)による風が吹き付けてきて、汗だくになってチェックリストと格闘していた私に一抹の涼感を与えてくれました。
 まだまだチェックリストは続きますが(途中を端折って)、推力を上げブレーキを離すとスルスルと動き始めました。自動車と違って方向はラダーペダルでコントロールします。 誘導路には中心線が引いてありますが、左右にフラフラと蛇行して思ったように直進出来ません。つい車の感覚で操縦輪(操縦桿)を操作してしまいます。

 滑走路までヨタヨタしながらも何とか辿りつき、滑走路の中心線に機首をアラインします。テイクオフ前の緊張の一瞬です。
ブレーキペダルから足を離し、スロットルを徐々に入れていきフルパワーにしますと軽快に加速を始めました。アッという間にローテーションスピードを超え操縦輪(操縦桿)を僅かに引きますと機体がスッと浮きました。 TAXIの時と違って離陸滑走は蛇行もせず真直ぐ進みました。それもそのはずです、教官がラダーペダルをガッチリと固めて私の勝手な操作を封じてあったのです。
このことは後で気付いたのですが、その時はスピードが上がるとラダーペダルはこんなにも重くなるものだと思い込んでしまっておりました。

 テイクオフ後、高度3,000フィート(約900メートル)まで上昇して水平飛行に移りました。

外部点検に始まり、ここまで来るのに何とやることが多いのか!
今回は無線操作(管制塔とのやり取り)は教官任せでした。何れこれも加わるのですから大変なことになるでしょう。 色々な作業と平行して無線(通報されてくる他機の情報やこちらが呼ばれているかどうかの判断も含めて)の対応もしなければならない訳ですから、 ただでさえ目一杯なのにそんな余裕あるだろうかと心配になってしまいます。
 今までは一つのことに集中して、ブレークスルーしていこうと励んできました。アーチェリーを始めた動機もそんなところにあります。
飛行機を操縦するためには沢山の情報を並列処理する能力が必要なようです。ということはパイロットは女性向?

 余談が長くなりました。話を水平飛行に戻します。
大牟田上空で右旋回して、白石方面へ向かいます。左を見廻すと島原半島が見えます。普賢岳は雲に覆われており山容を見ることができません。
有明海上空でエルロン操作だけによる内すべりやラダー操作だけによる外すべりを体験し、調和のとれた旋回との違いが実感できました。

 このころになるとようやく真っ白に近かった状態から脱し、廻りの景色を眺める余裕(?)が出てきました。遠くに諌早の市街地とその手前の諌早湾潮受け堤防、 前方にそびえる多良岳が望まれます。
 白石上空で右旋回して機首を天山方面へ向けます。我が家は天山の麓付近に位置します。残念ながら自宅は確認できませんでしたが、自宅上空と思われる地点で右旋回し佐賀市上空を通過して 離陸した佐賀空港を目指します。

 エンジン出力を絞り着陸のために降下を始めます。筑後川上空からファイナルターンして滑走路に機首を向けます。このころになると操縦は教官に任せっきりです。 操縦輪(操縦桿)やスロットルに軽く手を添えている程度です。ラダーも同様です。見事にストンと滑走路にランディングしました。ある程度減速してからの ブレーキ操作からやらせてもらいましたが、また元通り蛇行が始まりました。
 何とかエプロンに駐機させて、チェックリストの手順に従ってエンジン停止などの操作を行いました。エンジンが停止するとまた元の熱気に包まれます。 無事地上に戻ってきたんだという実感を肌で感じた一瞬でした。

 しばらく休憩して、今度はY氏の操縦による同乗訓練です。 掲載の写真で上空からのものはY氏操縦時に同乗したときに後部座席から撮影したものです。
また、地上のものは同乗フライトの前(休憩中)に撮影したものです。緊張から開放されて本当にホットしている様子がお解かりいただけると思います。



佐賀空港をテイクオフ




白石上空3,000フィートより佐賀空港を望む




久保田上空3,000フィートより天山を望む(自宅は天山の麓です。)




佐賀空港へのアプローチ(パイロットは一緒に訓練しているY氏とO教官)




初フライトを終えてホットしたところです。

2008/09/06新規

2008/12/29更新

第28話 操縦訓練記(1)」 「第33話 操縦訓練記(3)


ティータイムTop山浦綜合事務所 Tel.0952-71-1075 Fax.0952-71-1095Top

Copyright(C) 2008 Yamaura Office All Rights Reserved.