☆空調温度管理による省エネの仕組み☆

 空調温度管理をすることで、なぜ省エネになるのかを考えてみましょう。
空調機(エアコン)の冷房温度設定を25℃にした時と28℃にした時とを比べるといったいどちらが多く電力を消費するでしょうか?
おそらく答えは直感的にお解かりだと思います。もちろん、答えは25℃の時です。では一体どれ位いの消費電力の差が出るのでしょうか? この答えは、そう簡単にはでません。様々な条件によって異なることは容易に想像できることですし、簡単な数式で表現できるはずがありません。(もし、知っている方がおられましたら、是非とも教えていただきたいと思います。)
最も簡単な方法は、同じ(もしくは似たような)条件に設置された空調機(同一メーカの同一型式)に積算電力計を取付けて実際に測定してみることです。
 ここでは、その結果を云々することよりも、なぜ冷房温度を高く設定(暖房温度を低く設定)すると省エネになるのかを考えます。

<空調機の役割と動作概要>
 空調機は、外部の温度にかかわり無く部屋の温度を一定に保つことが重要な役割です。冷え過ぎても暑すぎてもいけません。
温度設定器(リモコンなど)で、冷房温度を26℃に設定したら外気温度が30℃であれ何度であれ、部屋の温度は26℃に保たれることが大切です。
そのために空調機には設定温度を維持するための仕組みが備わっています。部屋の温度(室温)を検知し、設定温度(この場合26℃)より高くなれば、冷気を出して部屋を冷やします。そして、部屋の温度が26℃より低くなると冷気を止めて(送風)自然に温度が高くなるのを待ちます。
このようなことを繰り返すことにより、室温を設定温度に保っています。実際には、設定温度(この場合は26℃)に対して±1℃程度で行なわれているようです。つまり、部屋の温度が27℃を超えると冷気を出して部屋を冷やし、部屋の温度が25℃より低くなると冷気を止めて送風という具合です。
ご家庭のエアコンでも吹出し口から冷たい空気が出てたり、冷たくない(室温と同じ温度)空気が出てたりしていることを体感することができます。

 温度調節の仕組みが解ったところで、電力(エネルギー)消費とどのような関係があるのかを説明します。本来ならば冷暖房の両方共考えなくてはなりませんが、冷房の場合だけ考えてみることにします。

どのようにして冷気を作っているかということは抜きにして、多くの空調機は冷気を作るために圧縮機(コンプレッサー)というものを動作させています。
実はこの圧縮機を動かす(冷気を作る)ために多くの電力を消費しているのです。
送風運転(冷気が出ていない)の時には、この圧縮機は停止していますので、あまり電力を必要としません。
つまり、冷気を出したり送風だけにしたりして室温を一定に保つ動作というのは、圧縮機を動作させたり停止させたりしていると言い換えることができます。

<設定温度と消費電力の関係>
 やっと本題にはいります。先程の例と同じように、冷房温度設定を25℃にした時と28℃にした時とを比べてみましょう。外気温度は30℃で室温は32℃、その他の環境は全く同じ部屋AとBがあったと仮定します。
部屋Aの冷房温度設定を25℃、部屋Bの冷房温度設定を28℃として運転を始めたとします。
運転が始まると両方の部屋の室温は徐々に下がってきます。室温が27℃に達した時、部屋Bの圧縮機は停止し送風運転になりますが、部屋Aの圧縮機は依然として動作を続け室温を下げていきます。部屋Aの圧縮機が停止するのは室温が24℃に達したときです。
室温が高い状態から設定温度まで下げるために明らかに部屋Aの圧縮機は長時間動作します。ということは、部屋Aの方が消費電力も多かったとういことを意味します。

 さて、一旦設定温度まで下がったところで、この室温を維持するための消費電力を比べてみたいと思います。
その前に、外気温と室温の差について少々検討しておく必要があります。問題を簡単にするため、窓からの直射日光や内部の発熱などは無いものとして考えます。
外気温度が30℃、室温は25℃としますと部屋の温度が低いので、外部の熱が壁や天井などを通して熱が伝わってきて部屋の温度が上昇します。直射日光や内部発熱は無いものとして考えておりましたから室温が30℃になった時に外気温度と釣り合って熱の移動が止まります。
次に、外気温度が35℃の場合はどうなるでしょうか、外気温30℃の時に比べてはるかに早いペースで室温が上昇していきます。つまり、室温と外気温の差が大きければ大きいほど室温は早く上昇します。逆に温度差が小さければ小さいほどゆっくり室温は上昇します。

 本論に戻ります。部屋Aは24℃で送風運転になり室温が上昇しています。一方、部屋Bは27℃で送風運転になり室温が上昇しています。共に外気温は30℃で、その差は部屋Aの場合に6℃、部屋Bの場合に3℃です。明らかに部屋Aの室温が早く上昇します。圧縮機が動作し始める温度は、共に2℃室温が上昇した時ですから、部屋Aが26℃が部屋Bが29℃です。
同時に温度が上昇し始めたとすると部屋Aの圧縮機の方が早く動作を開始します。つまり、圧縮機が停止している時間が短いということを意味します。

今度は、部屋を冷やす場合を考えてみましょう。部屋を冷やすということは、部屋が暖まる(外の熱が部屋に移動)ということの逆ですから、部屋の熱が外に移動すると考えてみます。一方、部屋に向かって移動してくる熱は、外気温度との差が大きければ大きいほど多くなります。これに逆らって熱を外に向かって移動させなくてはなりませんから、能力が同じならば外気温との差が大きければ大きいほど冷えにくい(室温がゆっくり下がる)ことになります。
部屋Aは26℃ですから外気温との差は4℃、部屋Bは29℃ですから外気温との差は1℃となります。各々2℃下がれば圧縮機が停止しますから、部屋Aの方が長時間動作することになります。

 以上をまとめてみますと、部屋Aは部屋Bに比べて室温が2℃上昇する時間は短く、2℃下がる時間は長いとういことになります。言葉を変えると部屋Aは部屋Bに比べて、圧縮機の停止時間(運転間隔)が短く、動作時間が長いということになります。つまり、部屋Aの圧縮機が部屋Bの圧縮機に比べて稼働率が高いということです。
一定時間で比べたら稼働率が高いほど長時間動いているということですから、消費電力も大きいということになります。

このように冷房設定温度を高くすると消費電力が減るという関係がご理解いただけたと思います。
また、暖房設定温度を低くすると消費電力が減ります。これは読者の皆様ご自身でお考えいただきたいと思います。

 下図は冷房設定温度を26、25、24℃とした場合の圧縮機の動作と温度変化の関係を描いたものです。


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