第88話 農業ことはじめ
以前「第62話 豊かさって何だろう」では、農業を老後の生活スタイルとして考えていましたが、急遽自分の責任において農地を維持する
ことに直面することになってしまいました。もっと後々のことだと考えて、少しずつ勉強しながらと思っていた矢先のことでしたので、少々荷が重いのですが仕方がありません。
そこはそれ、生まれもった楽天的な性格(「第56話 長所と短所(性格の自己分析)」)ゆえ、どうせやるなら楽しんでやろうと意気込んでいるところです。
早速、ここのところの陽気で一斉に草茫々となった田んぼを試しにトラクターで耕してみることにしてみました。
以前トラクターに乗ったのは、確か40年前(小学生)のことだったと記憶しております。
我が家(実家)にもとうとう乗用トラクターなるものがやって来て、ものめずらしさも手伝い親父に使わせてくれとせがんだものでした。意気揚々と乗り込み、
1反(10アール)程の田んぼを耕しました。結果は惨憺たるもので、みるみるうちに田んぼに土の波を作ってしまいました。後でこっ酷く叱られたことと平らにするために
大変な時間と労力が掛かったことは忘れもしません。以後、トラクターに乗ることを禁止されたことは言うまでもないことでしょう。
それ以来乗ったことが無かったトラクターに跨り(?)、エンジンスタートし、色々な操作レバーを確認していると(?)マークが沢山出てきました。
シャトルレバー、ADレバー、クリープレバー、PTOレバー、果てはモンローマチックなどなど何じゃそりゃといった感じで、大急ぎで取扱説明書を探しまわりましたが、
どこにもありません。一世代前に使っていたトラクターの取扱説明書があったので参考にして色々試して大体の雰囲気は掴めましたが、肝心のロータリーをコントロール
するモンローマチックの操作が全く見当もつきません。凡そトラクター本体が傾いてもロータリーを一定角度に保つ機構だということは判ったのですが、それと他の調整
項目との絡みが判りません。それと傑作だったのが、バックアップでした。私の業務経験上バックアップといえば、重要な項目をセーブするものだといった固定観念が
出来上がっておりました。そこで何をバックアップするのかなと散々悩んだ末、とりあえず「入」に設定しておきました。後で判明したことですが、バックアップとは
トラクターをバックさせる際に自動的にロータリーを上げる機構のことだそうです。
昔のトラクターはシンプルで良かったなどと言っていても始まりませんので、とりあえず動かしてみようと田んぼへ向かいました。ロータリー関連以外は、本質的に
昔のものと変わりはないので良いのですが、いざ耕そうとするとなかなか思うように行きません。15分くらいモンローマチックのコントローラーと格闘し、
何とか耕すことに成功しました。
今回は土を波打たせることもなく、静かなる海の如く平らかな田んぼになってくれました。これもモンローマチック様々といったところでしょうか。
さて、今年は何を作付けしたものかと考えあぐねておりましたところ生産組合の会合で、作付け作物を提出しなければならなくなり、
無難なところで水稲と大豆ということになってしまいました。
水稲栽培に関しては全くの素人です。苗代、田植え、稲刈りなど部分的な手伝いはしたことがあるものの、水の管理が全くわかりません。
ましてや山麓部の水田ですから、近くを流れる晴気川から取水した水を高い田んぼから順に下の田んぼへ流していくことになります。自分勝手な時期に
自分の田んぼに水を引くことができません。
私が生まれ育った筑後平野では、そこらじゅうに堀(クリーク)が張り巡らされ、バチカン(バーチカルポンプ?)といわれるものを電動機で廻して水を汲み上げておりました。
その後は、潅水機なるものが整備され、ゴム栓を抜けば水が勝手に入るような仕掛けになっておりました。
ですから自分の作業スケジュールを柔軟に組むことができたのです。ですがこの辺りでは、そのようなことは不可能です。勝手な行動は他人に迷惑をかけてしまいます。
やはり郷に入れば郷に従えの原則が大切な所以です。
田の方は、水稲と裏作で小麦ということにしましたが、さて畑作は何を作付けしたものかと色々と考えた挙句が、多品種を少量ずつ実験的にやってみようと思い、
早速次の種子を購入しました。
フルティカルトマト、ししとう、ピーマン、サヤインゲン、枝豆、ラディッシュ、ダイコン、葉ダイコン、ニンジン、ゴボウ、白ゴマ、アスパラガス、ブロッコリー、
ニラ、ホウレンソウ、ピーナッツ、カボチャ、スイートコーン、ゴーヤ、オクラ
それから、山の畑に植えるものとして、アーモンド、ヘーゼルナッツ、プルーンの苗木も購入しました。イチジクも苗木を頂戴しましたのでこちらも試験的に
植え付けしております。
選んだ根拠?
そりゃ決まっているでしょう。自分が好きなもの食べたいものです。
さて「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」となるか「虻蜂とらず」となるのか、その結果は如何に!
やはりこれも性格でしょうかね。前々から思っていたことですが、今まで色々なことをしてきました。ソフト開発に始まって、ハード開発などの開発畑を主に歩んできたものの行政書士や
省エネの仕事などなど。
自分でも百姓みたい(百姓の子には違いないのですが)だなと自嘲していたのですが、今度は職業的意味での百姓になることになりました。
そしてやる以上は、本当の意味での百姓になりたいと思っております。
今後は折にふれて、農業ネタも書き込んで行きたいと思っております。ど素人故に笑うに笑えない失態をしてしまうこととなると思われますので、
暖かい目で見守っていただきたいと存じます。
そして収穫の暁には、しっかりとご報告させていただきますので、是非とも我が農園で育てた作物を多くの方々に味わっていただきたいと思います。
そういうのを「捕らぬ狸の皮算用」と言われることを承知の上で大きな夢を描いております。
私って本当にお目出度く出来上がっているようですね。
<2019/11/16 追記>
本文中に「バチカン」と書いておりますが、どうも私の記憶違いのようで「バチカル」が正しいのかも知れません。似たような響きなので聞き違えたのか、その後記憶が変容したのか、
小学校低学年頃の記憶だったものですから今となっては確かめようもありません。
不正確な記述をして申し訳ありませんでした。
<参 考>
第57話 この不景気に思うこと
2010/03/09新規
2019/11/16更新
「第90話 農業ことはじめ(2)」
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