第110話 原発作業従事者の造血幹細胞凍結保存について
昨日、移動中にラジオで国会中継を聴いておりましたところ次のような質問がありました。後で、質問者である舛添要一参議院議員のブログで質問要旨を
確認してみましたところ次のような内容でした。
「大量被曝があった場合に備えて、自己の造血幹細胞の事前凍結保存をしておくと、万が一の場合、それを移植することで延命できる可能性がある。
虎ノ門病院では、すでに自己末梢血幹細胞採取の体制が整っている。さらに関連学会に属する全国107施設も協力を表明している。
ヨーロッパの専門学会(EBMT)も協力を申し出ている。しかし、政府は、そのような対策は不要だと言っている。この対策はとったほうがよいのではないか。」
以上、舛添要一参議院議員のブログより抜粋
以下はその答弁の要旨(うろ覚えですので私の主観も入っていると思います。)です。
質問に対し菅首相は「その必要なし」との答弁でした。その理由として、原子力安全委員会の意見を聴取したら「作業員の被爆線量の管理に万全を期しているので、
現時点でそのような対応が必要とは認められない。」との意見だったことを上げておりました。
私はこの答弁を聞いて、いきなりヒートアップしてしまいました。大人気なくも「馬鹿野郎と怒鳴ってしまいました。」
その後も質問と答弁は続きますが、平行線をたどるというか同じ趣旨の内容が言葉を変えて繰り返されるばかりでした。ものすごく虚しさを感じてしまいました。
「やれることは全てやる!」と言っていたのは、どこのどなたでしたでしょうか?
この答弁に菅政権の本質が現れていると思います。
現場の作業員は命がけで作業に従事しているのは、国民周知の事実です。そして、その劣悪な作業環境も報道されております。放射線という見えない恐怖に耐えながら
作業に従事されている方々の安全に繋がるようなことであれば、そして万一の場合には救われる希望が持てるとしたら万難を排してでも実現するのが筋ではないのでしょうか?
それなのに・・・。如何なる理由があるのでしょうか。作業に万全を期すといいますが、万全を期しても絶対起こりえないと誰が言えるのでしょうか?
想定外と言い訳したのは一体誰だったのでしょうか?
造血幹細胞の採取の危険性も答弁の中にあったように聞こえました。仮に、造血幹細胞の採取において危険が伴うとしても、十分に説明した上で希望者に実施すれば良いではありませんか。
それを原子力安全委員会の意見のみに従って作業員の希望を打ち砕いたとしたら、私はその人間性を疑います。
賛否両論があれば大局的観点から比較衡量して決断するのが政治家の責務でしょう。自分の意に沿わない意見は誰しも嫌なものです。心地よい意見のみ聞くのも人の常です。
しかし、一国の総理大臣はそれでは務まりません。何よりも国民の生命財産を守ることを第一に考えることが求められます。それこそが首相の資質ではないのでしょうか。
一体、菅首相が万一大量被爆した場合に命が救われる希望と何を比較衡量して決断したのか知りたいものです。
ついでにもう一言。
テレビで試食パフォーマンスが報道されておりました。キュウリをパキッと折り、美味しそうに食べておられました。言うまでもなく、放射能汚染の風評被害に対する
広報活動の一環として行われたものです。
テレビ画面からは判然としませんが、恐らくは事前に放射線検査がなされた安全な農産物であることが確認されたものを食されたものでしょう。
しかし、国民に安心して食べて良いというのなら、国が定めた放射線量を超えた食品をカメラの前で測定し、バリバリに放射線が検出されているものを目の前で食する位の
パフォーマンスをしない限り納得できないでしょう。それ位に国民が政府に抱いている不信感が高まっているのです。国が定めた基準が「直ちに健康被害が無い。」と仰る
のなら、毎日このパフォーマンスを続けてください。そうしてこそ、やっと失われた信頼を取り戻せるというものです。
自分の身を安全なところに置いておいて何を言っても、誰しも「はい、分りました。」と言えるものではないでしょう。
<2011/05/25 追記>
新聞報道によりますと、衆議院復興特別委員会において、斑目春樹原子力安全委員長が国民新党の亀井静香代表が斑目氏更迭を求めたことについて問われ
「職務を全うすることが使命だ。ここで逃げたら末代までの名折れ。この問題にとことん付き合いたい。」と反論されたそうです。
この記事を読んだ時ものすごい違和感を感じました。「職務を全うする」ことや「この問題にとことん付き合いたい」といったことは、当然そのような使命感をもって
ことに当たって欲しいと思います。しかし、「末代までの名折れ」という言葉はどうもいただけません。言葉尻を捉えて、云々することは望ましいことではありませんが、
責任ある立場の人が、自分の名誉のために職務を全うしたいとお考えならば、それはお門違いではないでしょうか。
自分の名誉を回復するためならば、とんでもないスタンドプレイに走らぬとも限りません。先の造血幹細胞凍結保存に関する原子力安全委員会の意見といい、
今回の国会答弁といい、このような方に国家の一大事を任せてよいものでしょうか?
と感じてしまいました。
2011/04/26新規
2011/06/20更新
|